審美歯科

笑顔をかたちづくる重要な要素のひとつに「歯並び」があります。歯の色が黄ばんで見える、歯に汚れがついている、歯並びが気になるなど、口元に関するお悩みは患者様によってさまざまです。 こうしたコンプレックスがあると、無意識のうちに口元を手で隠してしまったり、思いきり笑うことをためらってしまったりすることもあるでしょう。
そのような気持ちの抑圧は、ストレスの原因にもなり得ます。ストレスは唾液の分泌量に影響を与え、口腔内の自浄作用がうまく働かなくなることで、虫歯や歯周病のリスクが高まる悪循環に陥る可能性もあります。さらに、それが人間関係にまで影響を及ぼすケースもあるかもしれません。

一方で、整った歯並びと白く清潔感のある歯は、笑顔に自信をもたらし、明るく爽やかな印象を与えます。口元に自信が持てれば、心の面でも開放的になり、ストレスの軽減にもつながります。
このような悪循環を断ち切るためには、機能の回復だけでなく、見た目の美しさにも配慮したアプローチ=審美歯科の考え方が大切です。

現代の歯科医療は、「咬む・話す」などの機能面だけでなく、「見た目の美しさ」も含めて、総合的にサポートする時代へと進化しています。

審美治療について

審美治療とは、虫歯や歯周病などの治療を目的とした一般的な歯科医療とは異なり、歯や歯ぐきをより美しく、そして健康的な状態へ導くことを目的とした治療です。
見た目の美しさを追求するだけでなく、口元への自信が生まれることで、精神的にも大きなプラス効果が期待できます。

また、審美治療は単に「見た目を整える」ためのものではありません。
噛み合わせのバランスを整えることで、咀嚼や発音などの機能面を改善に導く役割も担っています。さらに、歯に対するコンプレックスから笑顔や会話に自信が持てない方にとっては、日常生活の質そのものを高める治療といえるでしょう。

審美治療も他の医療行為と同様に、患者様が健康で快適な毎日を過ごせるようサポートすることが本来の目的です。 歯の色や形、咬み合わせなどに関してお悩みのある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

歯を失った場合の選択肢

日常生活の中で、事故や病気、虫歯など、さまざまな理由で歯を失うことがあります。
一度失った天然歯は、元に戻すことはできません。その損失は非常に大きく、歯の持つ価値は単なる金額では測れないものです。

失った部分が小さい場合には詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)、歯を全体的に失った場合には、ブリッジや入れ歯、インプラントといった補綴治療が選択肢として挙げられます。
こうした治療には、それぞれ異なる「材料」を用いることになります。たとえば、耐久性を重視した金属素材、審美性を優先したセラミック、費用を抑えた保険適用の素材など、さまざまです。
素材によっては、奥歯に金属が見える、前歯の色味が周囲と合わないなど、見た目の違和感を感じることもあるかもしれません。

しかし近年では、歯科技術や素材の進化により、天然の歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりの補綴物が製作可能となっています。見た目の美しさだけでなく、機能性にも優れた選択肢が増えており、患者様のご希望に応じた治療が実現できます。

天然歯のような人工歯をめざして

天然歯に近い人工歯

天然歯に近い見た目や質感を持つ人工歯を再現するには、何が最も重要なのでしょうか。その鍵となるのが「光の性質」です。
天然の歯は、内側にある歯髄(神経)を象牙質が包み、その外側をエナメル質が覆うという三層構造になっています。エナメル質は非常に硬く、水晶に近い硬度を持ちながらも光を透過する特性があります。

このため、象牙質の色がエナメル質越しに透けて見えることで、歯の先端部分は乳白色のような半透明になり、自然な輝きを放つのです。
さらに象牙質自体にもわずかな透過性があるため、光を受けた際の複雑な屈折や拡散によって、天然歯特有の美しさが生まれます。

では、こうした構造を人工的に再現することは可能なのでしょうか?
その答えは「可能」です。
現在では、3次元CAD/CAMシステムの活用や、天然歯に近い光の透過性や質感をもつ素材の開発が進んでおり、見た目にも自然で美しい人工歯を作製できるようになっています。

天然歯に限りなく近い素材 ― ジルコニア

天然歯に限りなく近い素材 ― ジルコニア

「オールセラミック」という言葉は、近年では広く知られるようになりましたが、その素材の進化は日々進んでいます。かつてのセラミック素材は「見た目は美しいものの、割れやすく脆い」といった声もありました。
しかし現在では、「ジルコニア」という高性能な新素材の登場により、そのイメージは大きく変わっています。ジルコニアは、曲げ強度が約1120MPa、弾性係数は210GPaと非常に高く、優れた耐久性を誇ります。
また、光を適度に透過する性質を持ち、天然の歯のような透明感や質感を再現できるため、見た目にも非常に自然です。

ラミネートベニアについて

ラミネートベニアとは、前歯の表面を薄く削り、セラミック製の薄いシェル(板)を貼り付けて見た目を整える治療法です。主に前歯の色や形を整えたい方に適しており、短期間で自然な美しさを実現できます。
通常、歯を白くしたい場合にクラウンをかぶせる方法がありますが、その際には歯を大きく削る必要があります。一方、ラミネートベニアは削る量がごくわずかのため、歯へのダメージを抑えつつ、自然な仕上がりが期待できます。

歯の変色が気になる方

ホワイトニングでは改善が難しい強い変色も、ラミネートベニアなら短期間で白く美しい歯に整えることが可能です。セラミック素材のため、将来的な着色や変色の心配もほとんどありません。

前歯のすき間が気になる方

前歯の間にすき間がある場合、ベニアで歯の形やサイズを調整することで、すき間を自然にカバーすることができます。

ラミネートベニアの注意点

歯の表面を、少量(0.3mm~0.5mm程度)ですが削る必要があります。そして、貼りつけるセラミック製のシェルは大変薄いため、強度が求められる部位には使用できません。そのため、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方、咬み合わせに問題がある方には不向きな場合があります。

審美性比較

ジルコニアオールセラミック

ジルコニアオールセラミックは、天然歯でいう象牙質部分にジルコニアなどを用い、その周りもセラミックを用います。天然の歯に近い光の透過性があるため、非常に自然な仕上がりが可能です。また、金属未使用の為、金属アレルギーなどのリスクが解消されます。ジルコニアは生体親和性に大変優れた素材でもあります。

メタル(銀歯など)

金属を用いた補綴物は、耐久性が高く長持ちする素材として知られています。なかでも銀歯は保険適用が可能なため、比較的低コストで作製できます。丈夫ですが、口を開けた際に目立ちやすく、見た目の自然さには欠ける点がデメリットです。体質によっては金属アレルギーのリスクが伴うこともあります。

レジン

インレー(詰め物)レジンは、詰め物(インレー)や歯の先端の欠けを補う際などに幅広く使用されている歯科治療の基本素材です。取り扱いやすく、保険適用で利用できる点がメリットですが、経年による変色や摩耗が起こりやすいといった欠点もあります。長期的な審美性や耐久性を求める場合には、別の素材を検討することが推奨されます

▼横スクロールで表を確認できます
  ジルコニアオールセラミック レジン メタル
審美性
二重丸
見た目の自然さにこだわった審美治療
丸
時間の経過とともに美しさが損なわれる傾向あり
バツ
金属色のため審美性に劣る。
奥歯への適用が一般的
親和性
二重丸
金属を使用していないため、
アレルギーのリスクがありません
二重丸
金属アレルギーを気にせずご使用いただけます
三角
金属アレルギーの可能性がある
耐久性
丸
耐久性に優れている
バツ
金属やセラミックに
比べ摩耗しやすい
丸
耐久性に優れている
迅速性
三角
完成までに時間を要するため、
通常は3〜4回の来院が必要です
二重丸
レジンの充填は処置時間が短く、
比較的スムーズに終わります
丸
製作に時間がかかるため
通常2回の通院が必要
経済性
三角
手作りのため高コスト
二重丸
保険適用のため低コスト
二重丸
保険適用のため低コスト

3次元CAD/CAMシステム

3次元CAD/CAMシステム

現在では、詰め物や差し歯、入れ歯などの補綴物(技工物)を製作する工程において、3次元CAD/CAMシステムの導入が一般的となっています。

患者様のお口の中を再現した石膏模型を専用スキャナーで読み取り、コンピューター上に立体的な口腔内のデータを構築します。 その上で、違和感なく収まるように1本ずつ理想的な形状を設計(モデリング)し、完成した設計データをもとに、ジルコニアやチタンなどの素材を高精度で削り出していきます。
このシステムの活用により、高い精度と短い製作期間の両立が可能になりました。

最終的な見た目の自然さを左右する表面の微細な仕上げは、経験豊富な技工士が手作業で丁寧に行うことで、審美性にも十分に配慮されています。

審美的歯科治療のリスク・副作用

セラミック治療

  • 機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療と比べて高額になります。
  • 噛み合わせの状態や、歯ぎしり・食いしばりが強い方においては、まれに補綴物が欠けたり割れたりするケースがあります。
  • 金属のみを使用した補綴物に比べ、歯を削る量がやや多くなる場合があります。
  • 必要に応じて、根管治療(歯の神経処置)や補強のための土台作りを事前に行うことがあります。
  • 歯ぎしりや食いしばりが強い方には、破損リスクを軽減する目的でマウスピースの装着をおすすめすることがあります。

ラミネートベニア

  • 機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療と比べて高額になります。
  • 噛み合わせの状態や、歯ぎしり・食いしばりが強い方においては、まれに補綴物が欠けたり割れたりするケースがあります。
  • 加齢に伴って歯ぐきが下がることで、見た目に支障が出た場合は、再度治療が必要になることもあります。
  • 歯を削る量は最小限ですが、処置後にしみる症状が出ることがあり、強い痛みがある場合は神経を取る治療を行う可能性もあります。